奥林:
帝人さんは、繊維や医療、ITなど、多岐にわたる事業を世界的に展開されていますが、職場のグローバル化も進んでいるのでしょうか?
吉村:
一昨年まではドイツ人が上司に、昨年からは部下にシンガポール人がいます。日常的に外国人と接するという環境に、あらためてグローバル化を感じますね。
奥林:
異文化の方々とビジネスを行う上で、大切なこととはどんなことでしょうか。
吉村:
基本的には日本人でも外国人でも、仕事で求められるものは同じです。ただし外国人の場合、まず言葉や文化が違いますし、日本の“常識”も通じません。ですから仕事を進める上で相手の立場に立ち、伝わるまで繰り返し丁寧に教えることが大切ですね。
奥林:
大阪国際大学のグローバルビジネス学部では、学部生全員に海外留学・研修を体験させて、海外には様々な“常識”があるということを学んでもらおうと構想しています。
吉村:
学生時代に海外を経験することは、とても良いことだと思います。私は、インドネシアに4年間駐在していたのですが、実際に海外で生活をして、外から日本を見るという経験は非常に貴重ですね。「世の中にはいろいろな常識がある」ということが実感として理解できました。
奥林:
海外のグループ会社が集まりミーティングを行うこともあると思うのですが、その場合どのようにして意見をまとめていくのでしょうか。
吉村:
ある全社的なプロジェクトを進めていた時、中国やシンガポール、オランダ、アメリカといった、海外のグループ会社代表を本社のある日本に招集しました。会議は、当時の上司だったドイツ人が仕切ってくれたのですが、それぞれの個性や専門性を最大限に尊重し、時に「おだて」も交えながら、みんなをまとめていましたね。
奥林:
日本人はプレゼン下手と言われますが、やはり外国人の方が上手なのでしょうか。
吉村:
そうですね、弊社の海外グループ会社の中では特にオランダ人のプレゼンが上手。特別に訓練しているのだと思います。
奥林:
日本人にも訓練が必要ですね。それでは、他企業と交渉する際のコツはありますか。
吉村:
国により交渉スタイルは様々ですが、こちらも相手と同じように机を叩いて主張した方が良い場合もあります。お互い意見を主張し合って、交渉を進めることが大事です。また、地域によっては現地語も求められるので、その都度勉強することも大切ですね。インドネシアに駐在中、組合との交渉があった際には、英語ではなくインドネシア語が必要になりました。
奥林:
グローバルな仕事に携わる、仕事の魅力とは何でしょう。
吉村:
今、社内で大きな期待を寄せている炭素繊維の技術があるのですが、アメリカの大手自動車メーカーと現地で軽くて強い車体の共同開発を行なっています。多様な人々と今までにないビジネスに挑戦できるところに面白さを感じますね。
奥林:
海外へ行けば、ビジネスチャンスも広がりますからね。これから、益々グローバル化するビジネスに対応した研修などもあるのでしょうか。
吉村:
弊社では、全ての新入社員を対象に2週間の海外研修を実施しています。研修先は、新興国のインド、インドネシア、中国です。グループ会社の見学や取引先への訪問はもちろんですが、メインとなるのは現地のビジネススクールに通う人や大学生とのディスカッション。外国人の強いハングリー精神や議論の巧みさを直に体験することで、自分に足りないものを知り、成長のきっかけになればと思います。
奥林:
吉村さんが一緒に働きたいと思う人物像はありますか?
吉村:
相手が日本人でも外国人でも、同じように能力を発揮できる人ですね。これからは、外国人に対してもリーダーシップを発揮していかなければなりませんので。
奥林:
本日は、貴重なお話をありがとうございました。