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優秀賞【日本語エッセー部門】 時と場所を越えて 沖縄県立向陽高等学校 3年 大城 沙織さん

 ある日、ずっと紛失していた私の時計が見つかった。昨年の秋に訪れたアメリカで紛失した時計をホストファミリーが発見し、送ってくれたのだ。広い海を越えて私の元に返ってきた時計は、何も変わらず時を刻み続けていた。そして、私はふと思い出したのだ。あの言葉を。
 「想いは時も場所も越えてつながる」この言葉は、KAKEHASHIプロジェクトの説明会で耳にしたものだ。KAKEHASHIプロジェクトとは、北米地域と日本の文化交流を目的に作られたプロジェクトである。そもそも、私がアメリカを訪れることになったきっかけもこのプロジェクトだった。
 日本を離れて十時間あまり。星条旗が至る所ではためき、ネオンが輝くロサンゼルスの街は、異国の風に包まれていた。日本とはかけ離れた風景に戸惑い、興奮しながら、私は初めて訪れたアメリカを楽しんでいた。
 そんな行程中、訪れた全米日系人博物館が私には忘れられない。全米日系人博物館は、アメリカへ渡った日系人の歴史を紹介している。彼らが歩んだ歴史は苦難の連続である。過酷な労働環境に加え、太平洋戦争中の強制収容所への連行。展示を見学する私達の私語は消え、顔をしかめるばかりだった。だから、私は思わずにはいられなかった。彼らはアメリカへ渡ったことを後悔しなかったのだろうか、日本人であることを恨んだこともあるのだろうか、と。
 しかし、先人達は逞しかった。日本とアメリカ、二つの祖国をもつ者として両国の架け橋になろうとしたのだ。全米日系人博物館が位置するロサンゼルスには、リトル・トウキョウと言われる日本村が存在する。日本食が味わえ、お寺もある観光地の一つだ。日本文化をアメリカへ持ち込み、上手く融合させながら、生きていく。そんな彼らのしなやかさに私は敬服するばかりだった。
 しかし、同時に私は思ったものだ。どうして、彼らはそんなことができたのだろう、と。その答えは、その後に行われたホームステイで見つかる。
 私のホストシスタ―がこう言ったのだ。「私は日本のことが好き。貴方のことがもっと知りたい」と。日本のアニメが大好きだという彼女と私は一瞬にして打ち解けた。私達の間には、言葉の壁など存在しない。彼女と共に過ごした日々を経て、ホストファミリーの優しさに触れた私もまた思った。アメリカのことをもっと知りたい。世界にもっと触れたい。そして、私も日本と世界をつなぐ懸け橋になりたいのだと。
 遠い昔、アメリカへ渡った日系人の原動力は、この異国への興味だったのかもしれない。私も異なる文化に対する好奇心と尊敬の念を忘れずに、過ごしていきたい。この想いは時も場所も越えるのだと信じている。
 私の時計は、今もなお時を刻む。私は世界がつながる将来が楽しみだ。

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